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身体論ノート ピラティス×プロフェッショナル ラグビー元日本代表 宮下 哲朗

第1回はラグビー元日本代表 宮下 哲朗さん


プロフェッショナルのこと、身体と心のこと、ピラティスとの共通点についてインタビューさせていただきました。


・プロフェッショナルについて

・プロフェッショナルがピラティスを体験し、何を感じるのか?

・プロフェッショナルにとっての身体と心とは?

・ピラティスとプロフェッショナルの共通点とは?

をセッション後インタビューさせていただいた事をまとめていきます。


プロフェッショナルのプロフィール

📷

宮下哲朗 Tetsurou Miyashita

東芝エネルギーシステムズ㈱ ラグビー元日本代表

1976年4月8日生まれ。東京都出身。神奈川県立希望ヶ丘高校卒業後、関東学院大学に入学。ラグビー部に所属し、97 年度の大学選手権で初優勝、98 年度の大学選手権で2 連覇を達成する。大学卒業後1 年間、会社員として勤務した後、東芝府中ブレイブルーパスのメンバーとなり、ラグビー選手として活躍する。ポジションはフランカー。ラグビー元日本代表。現在は東芝エネルギーシステムズ㈱に勤務しながら、現役を退いたスポーツ選手のセカンドキャリアをサポートする活動にも積極的に取り組んでいる。


宮下さんにとっての「ラグビー」


Taku(以下T):いま注目のラグビー。まず日本代表まで昇りつめた宮下さんにとって「ラグビー」とはなにか、教えていただけますか?


宮下さん(以下宮):私にとってラグビーとは「人と人とが通じ合っていく手段」です。

認め合い、高め合い、磨き合う=醗酵状態、人間本来の営み(悦び)を体現し多くの人にそれを伝える表現の手段です。ゲームに勝つことは大事です。しかし、あくまでもより多くの人に深く伝えるための手段であり勝つことは目的ではないと考えています。


T:勝つことは手段。人と人とが通じ合っていくことという目的について詳しく教えてください。


宮:ラグビーの一つ一つのプレーの向上や個人的な目標、チームとしての目標の達成 それを目指しひたすら努力する事はとても大事です。そうじゃないと満足する結果など得られるはずがない。

ただ勝った負けたの結果で否定・肯定するのはよくない。大事な事はもっと深い所 日々の鍛錬の中での「苦しみ」「痛み」「辛さ」「葛藤」「悔しさ」を正面から向き合い受け止めた上でいかにして「ブレない自分」で突き進んでいけるかが本物としての価値が問われる所、そういう視野でラグビーと関わってラグビーを通して自分自身のパーソナリティーを磨くという事が大切です。


T:これはピラティスでも同じことが言えますね。

身体を動かす楽しさや「できた!」という喜びはもちろんですが、「できる、できない」で自分を評価してピラティスをやっていると苦しくなってくる。「今、おこっていること」に目を向けずに結果を求めてしまう。

エクササイズができることはもちろん目指していきながら、その「過程」にたくさんの気づきがあって、日々の実践のなかでピラティスを通して自分の身体の扱い方がわかり、心の扱い方がわかる、それが「ブレない自分」につながる。自分自身のパーソナリティーを磨くというところは共通しています。


ラグビー精神とは?


T:今回、行われているラグビーワールドカップ日本大会の成果で日本中がラグビーに注目しています。ラグビーについて興味を持つ人、知りたい人が増えています。今回のワールドカップの戦いぶりを見て感じること伝えたいことを聞かせてください!


宮:ラグビー精神、人間性、ラグビーの世界観をもっと知ってもらいたいですね。

この大会を通じて真のラグビー精神と日本本来の精神性、風土が掛け合わされ新たな時代を創造していく世界共通のスタンダードが確立されはじめていることを強く感じています。


T:外国人選手が日本の精神を学び、日本人として戦っている姿にはまさに新しい日本のスタンダードを感じます。


宮:「礼儀正しいこと」、「相手を思いやること」、「共に分かち合うこと」、「慮ること」、がこんなにも心地よくカッコよいことである!というスタンダードが日本発世界初で圧倒的に発信され蔓延されています。日本に訪れている外国人サポーターもこのいわれもない「日本という場」の圧倒的なエネルギー、心地よさを体感し次々と覚醒されている様子です。

この大会をきっかけに来年の2020東京オリンピックへと繋がれ、その後もこの日本というこの場は世界中の人々が集結してくる「本当に大事なものを思い出す覚醒の場」となっていくことを確信しています。





ラグビーで育まれる人間性


T:ラグビー選手の人間性にも注目が集まっていますが、ラグビーを通じて身体と心がどのように育まれるのか教えてください?


宮:選手を引退し10年が経ちますが、あらゆる場で「ラグビーをやっていた」という共通点だけで生まれる無条件の一体感、共感、が自然発生的に生まれその独特の感覚により多くの豊かな人間関係が形成され続けています。

どのレベルでやっていたかとか関係なく「ラグビーをやっていた」というだけで無条件で互いのリスペクト感が生まれるのです。


T:私もラガーマンとしての経験がありますが、宮下さんには全く及ばないレベルでした。しかし、何故かラグビーをしてた人というのは言わなくても通じるような、同じ釜の飯を食べたような同志という気がします。


宮:そうですね。そして、ラグビーは痛い、スポーツです。自身の痛いこと、苦しいことを受け入れ全体(チーム、仲間)の貢献と一致したときにそれはこの上ない悦びと昇華していきます。

自身の特徴が全体に貢献していると実感できたとき、人はその役割に悦んで命を懸けるようになります。同時に仲間たちのそういう姿にも共感でき認め合い磨き合うことができます。


T:まさにOne for All,All for Oneですね。私も試合中に気持ちが折れそうな時、自分より身体が小さな仲間が、強大な敵に捨て身でタックルに行く姿を見て勇気をもらう瞬間が何度もありました。

戦いを共にした仲間とは、いろいろ説明しなくても日常生活でもお互いを「察する」「時間を分かち合う」という強い絆ができたと感じます。


宮:そうです、その感覚を身体を通じて体感し合ってきた同士である。共感、一体感なのだと思います。その体現こそが、これからの時代に求められ創造していく生き方であると確信しています。

ラグビーは「人間として生まれた悦びを体現し、世の中にそれを表現し共感し合い伝播していく」そういう人間を育むスポーツです。


T:ピラティスでも同じことが言えます。ピラティスという共通のコンテンツで世界中がつながっています。流派や他分野、言語に関係なく自分の身体を探求している人たちへリスペクトする精神性は共通する部分です。


少年時代の体験。「勝つ」意味。


T:宮下さんは学生・社会人と通じって12回も日本一を経験されていますが、ラグビーというスポーツを通じて人間本来の在り方、自分自身のパーソナリティーを磨くということを大切にされていますね。「勝ち負けはそれを表現するための手段である」と。

 日本代表になるまでの経歴の中で、「勝つ」事の価値にも変化があったと思います。

ゲームの勝ち負けだけではないところに何かがあるということ。そう考えるようになった変化について教えてください。伝えるためと意識し始めたのはやはり日本代表というところからですか?


宮:小学校低学年の徒競走で女子3人に負けて5位になったことがありました。

その時ヘラヘラして5位のフラッグに誘導されている私をみた家族(両親、兄)は

「この子は勝ち負けとか興味のない子なんだね」と微笑ましく面白がってくれました。

一方で2位になっても親に怒鳴られている同級生もいて、私はその時に5位でも家族を和ませて私自身は家族の愛を感じた一方、世間は必ずしもそうではない!というコントラストを色濃く感じてしまいました。

それ以来「勝つことってなんなんだろう?」という疑問が生まれ、勝つこと=いい  負けること=ダメ!はたして本当にそうなのだろうか?というテーマで物事を捉えるようになりました。このテーマは矛盾することもため、葛藤も多いですが人が生きていく上で大変興味深いテーマであると感じています。

ラグビーをプレーする目的は「人と人とが互いに認め合い磨き合っていく本来の営みをラグビーを通じて体現し表現する!」そしてそれをより大きく深く伝えるための手段として勝つ! 優勝する!!という一貫した想いでプレーをし続けてきました。


代名詞の「タックル」に込められた思い


T:宮下さんがラグビーを通して伝えたい人間のよろこびとは?またタックルに込められた教えてください。


宮:私の代名詞であるタックルは相手の攻撃を寸断するためだけではなく、むしろ仲間やすべての人々の魂に火をつけ、それぞれの役割に目覚めさせ、全体を一体化させる!(場を作る)ことが最大の目的でありました。


私はこの状態のことを「醗酵状態」と名付け、プレーを行う最大にして唯一の目的としてきました。

私にとって勝つこと、とはそのことに比べたら二の次のことであり(でも欠かせないもの)この状態ができあがったら結果必ず勝つ!という絶対的な確信があります。


ラグビー選手として日本国内ではこの体現ができた実感ですが、世界レベルでそれを体現できなかったことが心残りですが今回のW杯で後輩たちがそれを世界に向けて大発信してくれるものと確信しています。 (実際にそのような結果になっている!)


ラグビーというフィールドは離れてもあらゆるフィールドでその体現をし続け多くの人々と通じ合い磨き合い貢献していく関係を築き広げていきたい想いで活動しています。ラグビーというフィールドは離れてもあらゆるフィールドでその体現をし続け多くの人々と通じ合い磨き合い貢献していく関係を築き広げていきたい想いで活動しています。



②へ続く 次回は 宮下さんのピラティス体験の感想と身体と心について

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